成功体験の積み重ねも一瞬で崩れ去る。発達障害児の難しさ
発達障害児に限らず、健常児でも、子供たちにとって成功体験の積み重ねは非常に大事です。たとえ小さくても、それを積み上げていくことによって、大きな自信に繋がっていきます。
しかし、注意していないと、ほんの些細な出来事で、少しずつ積み上げてきたものが、一瞬で崩れ去ってしまう、そんな危うさを発達障害をもつ子供たちは持っています。
ここでは、広汎性発達障害をもつ娘の実体験をもとに、注意しなければいけないことを書いていきます。
積み上げてきた成功体験
はじめに、障害の有無に関わらず、人それぞれ違った特性をもっています。このお話も当てはまる人、当てはまらない人がいらっしゃるでしょう。育児に正解は無いように、一つの実例として読み進めていただければと思います。
私の住む地域の小学校は、集団登校といって、同じ地区に住む小学生が集まって登校するようになっています。他人との関わり・コミュニケーションに難がある娘にとって、これが小学校生活最初の関門でした。
というのも、保育園に通っていたときは、卒園する直前まで、登園を嫌がっていたからです。小学校ともなれば、保育園とは比べ物にならないくらい大勢の子供と関わらなくてはいけません。
入学前の春休みには、事前に通学路を一緒に歩き、予行演習を何度も行いました。入学前ではありましたが、小学校の先生方も、娘の特性を理解していただき、下駄箱の場所、教室の席、入学式の段取りなど、事前に教えていただいて、娘が先々の見通しができるように配慮していただきました。
その甲斐あってか、1年生の間は一日も休まずに通い続けることができました。はじめは登校班の集合場所に、母親がついていかなければならなかったのですが、徐々に見送る場所を手前にしていき、ついには家の玄関で「行ってきます」ができるようになりました。
たった100mほどの道ですが、誰の付き添いもなく一人で歩く・・・健常児にとっては何も特別なことではない些細なことですが、私の娘にとっては非常に大きな進歩でした。
予定調和が崩れたとき
2年生になっても変わりなく通っていましたが、ある日、予定外のことが起こりました。その日は高学年の児童が林間学校で、同じくらいの子も風邪でお休み、娘の登校班は娘と班長の6年生、二人だけになってしまいました。
集合場所から100mほど行ったところで、6年生の子が忘れ物をしたということで、家まで取りに帰ってしまいました。「すぐ戻るからここで待っていて」そう告げられて、娘は一人で待つことになったそうです。
予定外の事態に、パニックを起こした娘は、来た道を家の付近まで戻ってしまいました。一人で歩いているところに、林間学校へ行く児童が、親の車に乗って現れ、その日はその車で学校まで送迎してもらったそうです。
そして次の日・・・
集合場所まで一人では行けなくなっていました。集合場所は住宅地の中にあり、他の児童は誰かが来るまで家の中にいて、集合時間になっても出てこないのです。誰か一人でも現れれば、家から出てくるのですが・・・。
私の家は少し離れた場所にあるので、必然的に集合場所に現れるのは、娘が一番最初ということになります。娘の姿を確認すれば他の児童も出てくるのですが、一人にさせられたトラウマなのか、集合場所に人影がないことに不安を覚えるようになり、親の付き添いで集合場所まで行くことが復活してしまいました。
この件でわかったこと
健常児にとっては何のことはない些細なことかもしれませんが、娘にとっては大事件だったに違いありません。先々の見通しができる場面では自信をもって行動できるのですが、ひとたびその調和が崩れると、どう対処していいのかわからなくなってしまいます。これはアスペルガー症候群によくある特性です。
改善するには「○○だったら××する」というように、様々な場面に応じて対処の仕方を教え込み、引き出しをたくさん作ってあげることです。融通が利かない・・・と一言で片付けるのは簡単ですが、当の本人にとっては一大事でしょう。
この引き出しを作る・・・というのは、並大抵の苦労ではありません。発達障害児が困難に突き当たったとき、適切に対処法を教えてあげる必要があるからです。こういう体験をしたらこうする・・・ということを一つ一つ導いてあげるしかありません。
気をつけるべきこと
子供にとって、成功体験の積み重ねは大事なことです。積み重ねても崩れないように、しっかり固定して成長していきます。積み木に例えると、積むたびに接着剤で固定しながら積み上げるイメージでしょうか。
健常児と発達障害児の違いは、瞬間接着剤とでんぷんノリ・・・といったら怒られるでしょうか。すぐに強固に身につくのと違い、崩れないように慎重に、何度も何度も塗り重ねて根付かせる・・・それには周りの理解とサポートが必要不可欠なのかもしれません。
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