いえごと

仕事をしながら育児・家事に追われるパパのブログ

3D CADは設計者をダメにする?

   

部品図とノギス

私は機械の設計の仕事をしています。 近年は3D CADの普及に伴い、設計業務も様変わりしてきました。

私の父も同じく機械の設計をしていますが、当時はドラフターと呼ばれる製図板を使って製図していたようです。それが2D(平面)のCADに変わり、そして3D(立体)へと進歩してきました。

最近の若い設計者(こういうと年寄りくさくなってしまいますが)は、3D CADしか使ったことがない方も多くなってしまったようです。

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平面図から立体図を想像できない

入社したばかりの若い設計者に、イチから新規設計を任せることは少ないかと思います。 もともとある既存の装置から流用して、機能を改善したりする「流用設計」からとりかかるのがほとんどです。

かなり大規模な装置なので、まっさらな状態から設計というのはなかなか機会がないんですよね・・・。

で、参考になる図面をプリントアウトして渡すわけですが、開口一番「3Dのモデルはありませんか?」と・・・。

3D CADといっても、それぞれの部品には部品図と3Dのモデルがワンセットとなっているので、モデルももちろんあるんですが、まずは渡された紙の図面から「どんなモノ」なのか理解してほしいんです。

平面の図面でも、基本的に「正面・上面・側面」が描かれていれば、それがどんなものなのか、頭の中で3D化できるのが普通です。(できなければ設計者としてどうかと思う)

でも最近はより視覚的に3Dのモデルで表現されて、さらに思うがままに全方向からグリグリ動かして見れてしまう。

そんな便利なツールのおかげか、若いエンジニアは渡された紙の図面を前に、手が止まってしまうんです。

それ以前の問題として、2Dにしろ3Dにしろ、設計業務にとりかかるとき、いきなりCADから・・・という人が多すぎると感じます。 まずは紙に手書きでラフな絵を描いて、簡単な強度計算なりをするのが普通だと思っていたんですけど。

便利すぎる機能を盲目的に信頼している

ソフトウェアの種類にもよるかと思いますが、3D CADには構造解析や干渉チェックといった機能があります。 部品単体の強度解析から、組みあがった製品の固有振動、熱伝導・熱伝達、様々な解析ができます。

本来は自分である程度計算して設計した部品の強度確認として使ったりしますが、解析に頼り切っているエンジニアの場合、自ら計算することを放棄しています。

簡易であれ、まずは計算してアタリをつけてから設計に入るのではなく、適当に形状や板厚などを決めて、シミュレーションを走らせてしまいます。

その結果、出てきた答えが妥当なのかすら判断できずに、過剰な強度のまま設計を進めていってしまいます。

設計業務には何度もデザインレビューという、皆で議論する場が設けられますが、そこで説明する資料にも、シミュレーションの結果がコンター図で示され、視覚的に説得力のある資料に仕上がります。

見栄えもよく、機械設計者ではない人たちに説明するにはうってつけですが、その場で誰もシミュレーション結果の妥当性を問うことはありません。 ただ色がついていて、ソレっぽく見えれば納得してしまうんです。

どれだけ多くの手計算(といってもエクセルなどで計算しますが)の数値を資料に載せても、解析結果のスクリーンショット1枚には敵いません。本当は手計算と解析の結果、両方から、その妥当性を確認するものですが・・・。

しかもこの解析、境界条件の与え方次第で、答えをどうにでもできてしまうんです。あまり褒められた使い方ではありませんが、その場のレビューを通してしまいたい時や、もう後戻りできない状況のとき、解析結果を自分の都合の良いように見せることができます。

そしてその境界条件が正しいのか?をチェックできる人は多くありませんし、誰もチェックしようとはしません。

これでは良い製品の開発なんてできるはずもありませんし、出荷後に不具合が多発してしまいます。

あとがき

技術の進歩により、便利なツールのおかげで設計業務の生産性も大きく向上しました。

しかし、機械設計においては、今も昔も基本は変わっていません。ツールに頼り切って自ら考えることを怠れば、それ以上のスキルアップは望めません。

・・・と、なんか年寄りくさくなってしまいましたね(笑) 私もまだ40代、機械設計者としてはヒヨッコです。

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