A.S.A.P.「なるはや!」と仕事を依頼しても逆効果にしかならない
あなたが上司から仕事を依頼されるとき、またはあなたが部下に仕事を依頼するとき、「ASAP(as soon as possible=できるだけはやく!)」とか「なるはや=なるべくはやく!」と言われたことはありませんか?
急ぎの仕事の場合、ついつい言ってしまいがちですが、こういう依頼のされ方は逆効果なうえに、あなたが上司なら「自分は無能」と自ら言っているようなものなんです。
明確な期限がないから後回しにされる
本当に重要で急ぎな仕事では、「一刻も早く!」と言いたい気持ちはわかりますよ。でも、「ASAP」「なるはや」と思っているのはあなただけで、部下にはその重要度は伝わっていません。
いくつもの仕事を抱えていれば、自分の工数をどこにどれだけ割り振るのかは担当者が決めることです。
いまある仕事を片付けてから取り掛かったとしても、その担当者からすれば、「なるべくはやく」やりましたよ? ・・・となるのがオチです。
それに、こういった依頼のしかたをする人は、なんでもかんでも「ASAP」と口癖のように依頼する傾向があります。
担当者は、どれも「なるはや」なら、順番に片づけていこう・・・と思うのは当然です。
どの仕事がどれだけ重要なのかはっきりさせるためにも、仕事の重要度によって必ず期限を設けなければなりません。
個人個人、能力が違う
同じ仕事でも、任せる人によって処理できるスピードが異なります。1日で完了できる人もいれば、3日かかる人もいます。
今すぐにでも結果を出したい仕事で、「なるべくはやく!」と能力の低い人に依頼したのでは、アウトプットが出てくるのは3日後です。
でもそれは、その担当者の「なるはや」なので、依頼した側は何の文句も言えません。部下の能力を把握していない自分がいけないのです。
仕事の質が落ちる
私は機械の設計をしています。上司も部下もいる、なんとも微妙な立ち位置です。仕事を依頼されることもあれば、それを小分けにして部下に依頼することもあります。
「なるべくはやく!」と依頼された人間がどういう行動に出るか、嫌というほど体験してきました。
機械設計という仕事は、規模にもよりますが、自分で構想・検討して図面を描き、それを発注して組み立てて納品する・・・という幅広い業務があります。
全て自分でやるところもあれば、生産管理・資材・製造、と部門が分かれている大規模な企業まで様々です。
「無」から「有」を創り出す一番根本にいるのが設計者なわけで、その仕事には高い質が求められます。
納期に追われ「なるはや!」と依頼された人間は、その質を落としてでも間に合わせようとします。結果どうなるか?
- 寸法抜けで生産に遅延が生じる
- 制作した部品が取りつかない
- 強度不足で再制作
- 出荷後に不具合発覚
もちろん、担当者だけを責めるのは酷で、デザインレビューなどで指摘できなかった全員の責任となるわけですが、これもなんでもかんでも「はやくはやく!」と依頼する弊害ではないでしょうか。
「何も管理できていません」と言っているようなもの
仕事を依頼する際、「なるはやでお願いね!」と言うことは簡単で、しかも気軽にやんわりと急いでいることを伝えられる・・・と思ってしまいますよね。
たしかに楽です。言うだけなんだから。
でも、これではその仕事の重要度もボリュームも部下の能力もスケジュールも、何もかも把握できていない・管理できていない・・・と自ら宣言してしまっているのと同じです。
その仕事を実行するのに必要なリソースはどの程度なのか? 部下の能力でいつまでにできるのか? そのアウトプットは納期にミートしているのか?
「ASAP」「なるはや」と依頼する上司は、十中八九把握していません。
依頼したら即出来上がっていれば理想だし、何の苦労もありませんが、人間のできることには限界がありますし、使う道具にも物理的な限界があります。
仕事を依頼するのなら、最低限、仕事のボリュームと部下の能力を把握して、優先度から期限を明確に指示するべきです。
「なるはやで!」と依頼されたらどうするか?
仕事を依頼される側が、「なるはやでお願い」と言われたら、期限をしっかり確認しましょう。
そのうえで、「できる・できない」の判断を早めにして、無理ならすぐにアラームをあげるようにします。
今抱えている仕事のうち、後回しにできるものがあれば、上司と相談して優先順位付けするのもいいですし、人数でカバーすれば間に合うのなら、リソースを回してもらうことも必要です。
全体的なスケジュールを管理するのは上司の仕事ですが、自分自身のスケジュール管理は自分でしなければいけません。
与えられた仕事のボリュームと期限から、抱えている業務を調整しましょう。
まとめ
「ASAP」「なるはや」・・・急いでいることをやんわり伝えられたり、「とりあえずASAPと言っておけば急ぐだろう・・・」と気軽に使われがちですが、表現があいまいなので、重要度や緊急度がまったく伝わりません。
仕事をするからには、あいまいさを極力排除しなければなりません。
仕事を依頼する側は、適切な期限を設け、依頼される側はしっかりスケジュール管理をして、期限を厳守したいですね。
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